『三国志 巻一』の犠牲になった名もなき登場人物
百年にわたる乱世の興亡史を取り扱う三国志。
多数の登場人物が大きな魅力なのは間違いないですが、同時に、初心者にとって非常にとっつきにくい要素にもなっています。
「なんか出てきたと思った瞬間に斬られたぞ!?」
「こんな奴いたっけ? 長すぎて読み返すのも面倒くさいし分からない!」
みたいな。
当サークルでは初心者にも読みやすい小説の執筆を心掛けております。
上記の問題を解決するために採った手段。それは「覚えにくいなら名前を出さなければいいじゃない」でした。
史書には名前が残っているにもかかわらず、そして作中でも史書と同じ行動をしているにもかかわらず、
この横暴な指針によって名前が削除されてしまった人々がいます。
『三国志 巻一』での犠牲者を挙げ、追悼したいと思います(?)
- 三国序章
曹操の祖父、父:曹騰、曹嵩。いきなり登場人物がわわっと出てくるので容赦なくデリート。
孫堅の父:正史には残っていませんが、一説には孫鍾。以下同文。
劉備に支援した商人:張世平、蘇双。なんで重臣の生没年もはっきりしないのにこいつらの名前は正史に残っているんだ。
竇武と結託した太尉:陳蕃。どうでもいいけど、作中で清流派の「首魁」という言葉を使っているあたりで、書き手が清流派をどう思っているのか察してください。
皇甫嵩の叔父:皇甫規。涼州三明のひとり。涼州三明はみんな不器用な生き方している。わりと好き。
- 最後の将星
何進の父、継母:何真、舞陽君(名前じゃないけど)。舞陽君は正史と違う行動をしていますが、本筋に盛り込むにはややこしかったという理由でデリート。
- 涼州の狼
法令違反を皇甫嵩に上奏された十常侍:趙忠。後で登場しますがこの時点では名無し。十常侍にケンカ売るとか皇甫嵩さんは命惜しくないのかマジで。
張純の乱で劉備が従った官吏:劉子平。公孫瓚に役目を奪われています。ごめんね。
- 緯糸なき錦
孫堅に救援要請した県令:陸康の族子。しかし後のこと考えると孫家と陸家の関係って複雑よね。
- 大将軍の決意
袁紹に反論した官吏:陳琳。後の袁紹配下。彼の書いた檄文が大好きすぎてこうなりました。ごめん曹操。
- 洛陽争乱
尚書の報告を聞いてキレた将二名:呉匡、張璋。と言っても後漢書のわずかな記録と同じ行動すら描写していませんが。
剣を佩いたまま董卓の前に参じた者:擾龍宗。いまいち身元が分からないが、名士優遇策に外れたので有力氏族ではなかったのかな。もしくは侍御史という役職が邪魔だったのか。
- 反董卓連合
皇甫嵩の息子:皇甫堅寿。いかにも字っぽいお名前ですが諱は不詳。
曹真の父:曹邵。ただし姓名には異説あり。
董卓に名士優遇策を献じた配下:周毖、伍瓊。書いていて気付いたけど、配下という表現は微妙ね。
遷都に反論した官吏:楊彪。董卓や曹操を敵に回したわりには天寿を全うした稀有な人。
董卓殺害を試みた官吏:伍孚。上の伍瓊と同一人物である可能性があるが、とりあえず謝承の後漢書の記述を採用。
- 勝者のありか
揚州刺史と丹陽太守:陳温、周昕。周昕の弟の周喁は曹操の軍師もやっていたらしい。袁術、と言うか孫家と敵対したのが運の尽き。
陽人の戦いの董卓軍敗残兵:華雄。まさかのまさかで書き手はこいつの存在忘れていたんだぜ? 三国志きっての猛将なのに。信じられねえ。
- 抄話 断金抄
周瑜の従祖父、従父、父:周景、周忠、周異。
余談ですが、抄話はオマケということもあり、本編以上にフリーダムです。兪河の取り扱いをわざと間違えている。
これだけの人数、名前を削除しても、やっぱり三国志は登場人物がめちゃくちゃ多いです。
今後も同じ指針で名無しの権兵衛さんが大量発生するかと思いますが、来年1月27日発行予定の『三国志 巻二』をよろしくお願いします。